魔法の言葉

魔法の言葉がなくなった。

 

少し前までの私は、

気持ちも、音も、匂いも、印象も、

全て色と形になって現れていた。

 

もう少し前までの私は、

頭の中にもう一人の女の子が住んでいた。

可愛い女の子だった。幼馴染が4人いる女の子だった。バスケットボールが上手な女の子だった。髪が短くて、脚の細い女の子だった。

 

あと少し前までの私は、

魔法が使えていた。私の大切なものや、大好きな人は、その魔法で絶対的に守られていた。

 

かくかくしかじか、

たくさん曲を書いて、どうにかこうにか自分というものを割り出さなければならないと思うようになったここ最近。

魔法の言葉が使えなくなっていることに気づいた。

 

一体、私から何が消えてしまったのだろう。

 

もう、私の手の中には、実在するものしかない。

車は車。風は風。バラは赤で、ひまわりは黄色。

 

慌てて子供に戻ろうとしたが、もうあの頃には戻れない。

一生に一度しかない時間だったということに、今更やっと気づいた。

戻りたきゃ、戻れるような気がしていた。

 

心は現実を生きて、頭はネバーランドに住んでいるつもりでいたようだ。

 

なんて言ってたらさ、今この瞬間だって、一生に一度しかない時間らしい。

女盛りを逃すなよ。